企業出版のための基礎知識
企業出版

企業出版のための基礎知識

~36年のベテラン広報パーソンが伝授!~

「企業出版」という広報手法を考えたことはありますか?企業で書籍を出版するといえば、以前は、大企業や上場企業の経営者や事業の取り組みについてがほとんどでした。

最近では、中堅・ベンチャー・スタートアップ企業など、ユニークな経営者や話題のビジネスモデルなどもフォーカスされるようになってきています。社会課題を解消できるヒントがあれば、出版も夢ではありません。

そこで今回は、企業出版の基礎知識を解説します。

企業出版とは

「企業出版」とは、企業が主体となって書籍などを製作・出版することをいいます。例えば、書籍やパンフレット、社史、広報誌などがあります。

また、そのジャンルは、経営者の経営哲学や自伝、プロジェクトや製品開発の事例などのほか、周年事業としての社史などが挙げられ、社内報やPR誌も企業出版に含まれます。最近では、紙に限らず電子書籍での出版も増えてきています。

企業出版の目的

企業出版の大きな目的は、「企業のブランディング」です。

書籍をとおして、企業・経営者・商品・サービスのブランディングをおこない、売上や顧客獲得、社員のロイヤリティの向上など、経営上の課題を解決することができます。

企業出版をおこなうメリット

企業出版を行うメリットは、全国の人に自社について知ってもらえることです。

興味や関心をもった読者は、わざわざ費用を払い1冊の本を読んでくれます。自社について、多くの人たちに知られることにより、社会的信頼度や知名度が格段に上がります。

出版と報道の違い

広報PRの世界では、マスコミ報道されても、記事量(文字数)や放映時間の兼ね合いから、伝えられる情報には制約があります。

また、取材・編集記者や媒体の編集方針にのっとったフィルターがありそのアウトプットが「報道」となります。発信サイド(企業)が言いたい情報や与えたい印象が10あるとすれば、報道で読者・視聴者に伝えられるのは僅か2〜3割程度です。

書籍の場合、報道と異なり、代表者の考えや会社の事業の全体像を意図に沿って訴求できます。また、出版後は、書籍出版やその内容をネタにした広報活動により、書籍・筆者をフォーカスした報道を得ることで、さらなるメリットが生まれます。

書籍出版の種類と費用感

書籍出版の種類は、主に「商業出版」「企業出版」「自費出版」に分けられます。それぞれの特徴や違いを比較しながら、企業出版が出版業界において、どのポジションにあるのか確認していきましょう。

商業出版

これは“印税が入る書籍”を意味します。広報の手段としての実現レベルは超難関です。一般的に出版というと、この商業出版を思いうかべる方が多いでしょう。

商業出版は、出版社の編集者が企画をたてて、著者に依頼をし、著者またはライターが原稿執筆をします。その後、印刷・書店ルートの展開までを出版社が行います。

出版の目的は、書籍の売上と印税です。書籍の制作に関わる費用は出版社の負担となります。商業出版において重要なことは、「売れる本を作ること」です。

そのため、どんな企画を立て、誰に原稿を依頼するかは、発売日なども含めて出版社が決めます。一般的に初版で3,000部発行します。但し、企業や経営者が著名で社会的に影響力のあるテーマやコンテンツの場合は、商業出版として発行されることもあります。

企業出版

こちらは「企業が抱える課題を解決するための本」”です。企業出版は、商業出版と自費出版の中間にあたります。自費出版と同じく、費用は企業が負担するため、企業が出版社へ企画提案します。

大手出版社の場合、担当編集者がテーマ、執筆者・内容などを、企業の意向を踏まえて判断していきます。この場合は、社会的信用を重んじますので、企画が通らない事も多々あります。また、予算は一般的に数千万円ほどとなります。

中堅出版社の場合は、企画が通るハードルも予算もかなり低くなります。編集については、出版社で契約しているプロの編集者やライター、デザイナーが制作に協力します。プロの視点でより情報が整理され、洗練された書籍を作れるのが魅力です。さらに、書店で販売することも可能です。

自費出版

こちらは、「企業が出版社に依頼して書籍化してもらう」ものです。著者が費用を負担するため、テーマ・執筆内容やタイトルも含め、自分が伝えたいことをおおむね表現できるのが特徴です。

まずは、こちらの企画内容を出版社に提案し、出版社サイドから予算を提示してもらい契約となります。企画・執筆内容・デザインなどは、出版社や編集者からアドバイスも受けられます。内容は、自分史や自作の小説・詩集など様々です。商業出版に比べて発行部数は少なく100部程度です。

また、書店での流通はされないので、友人や知っている人に配るのがほとんどのようです。最近は、ネット通販や電子書籍の普及により、より身近なものになりました。自費出版を専門に扱う出版社も増えてきています。

まとめ

昨今、「広告の効かない時代」と言われています。嗜好の多様化やオンライン・オフライン双方でさまざまなメディアが登場したことで、情報が届きにくくなりました。チラシやパンフレット、小冊子を作っても、反響がなかなか得られないという企業も多いでしょう。

広告宣伝費や人材面でのリソースが限られたベンチャー・中堅企業であればなおさらです。そうした中で、注目を集めているのが企業出版です。自社や経営者・事業の取り組みに、世の中の課題解消のヒントになるコンテンツがあれば、これまで認知されなかったコアターゲットの人々にも全国規模でリーチができます。

最近は人手不足から採用強化として書籍を出版し、採用・教育ツールとしても活用することもあります。加えてIPOに向けて機関投資家、個人投資家、金融関係などの様々なステークホルダーに企業価値を知らしめる目的で出版も増えてきています。

広報活動の手段として、自社での書籍出版も考えてみてはいかがでしょうか。

出版後の「書籍PR」についてはこちらの記事で解説しています。

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記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴40年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

三上 毅一
記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴40年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

三上 毅一