「主催もの」は他社が取材できない? 意外と知らないメディアのルール
元新聞記者が教える“ダメなPR”

「主催もの」は他社が取材できない? 意外と知らないメディアのルール

新聞社などのメディアは、客観的な立場から情報を発信する公平中立な存在。ですが実際には、取材について“暗黙のルール”があり、ある条件に当てはまるイベントは取材NGになるケースがあります。広報PRパーソンにもあまり知られていない、メディアの取材ルールについて紹介します。

地元の目玉行事でも主催社以外は取材できない

広報PRパーソンの皆さんはイベントの取材誘致をする際に、特定のメディアがかかわっているため、それ以外の媒体から「取材できない」と言われたことはありませんか?

筆者が新聞記者から広報PRパーソンに転身し、意外と知られていないと気付いたのが、いわゆる「主催もの」などを取材する際のルールについてです。催しものだけでなく、実は夏の風物詩として毎年取り上げられるある場所にも、メディアの縄張りは存在します。今回はそんなメディアの取材ルールについて解説したいと思います。

筆者の新聞記者としての初任地は滋賀県の彦根市で、琵琶湖東岸で自作の人力飛行機による飛行距離や飛行時間を競う大会「鳥人間コンテスト」の舞台としても知られています。

記者1年目の大会開催が近づいたころ、イベントの準備段階の様子を取材しようとすると支局長からストップがかかりました。この大会は読売テレビが主催しており、番組制作のためのイベントだからです。そのような「主催もの」の行事を、同じ読売グループの読売新聞以外の新聞社が取材すると、競合メディアの宣伝をすることになってしまうため、取材NGとなります。

朝日新聞社が主催する「夏の甲子園」や、毎日新聞社が主催する春の「センバツ」、読売グループが共催、後援する「箱根駅伝」だけは別格となり、毎年他の系列のメディアも熱心に取材しています。特別に公共性が高い行事であり、全国の読者や視聴者が知りたい情報だからです。朝日新聞の記者ではなかった筆者も、夏の地方予選で滋賀の地元球児や監督に取材を重ね、甲子園球場にも行きました。

系列メディアについて調べよう

広報業務を行うみなさんは、系列メディアやグループについても改めて調べておく必要があります。読売系列とは、読売新聞、日本テレビ、読売テレビ、スポーツ報知などですね。「鳥人間コンテスト」の場合も、読売新聞は読売テレビと同じ系列のため取り上げることができます。

朝日新聞社の主催行事の場合は、スポーツ紙が取り上げるとしたら日刊スポーツだけです。同じ系列のTVや新聞、スポーツ紙はどこなのかは知っておいた方が良いでしょう。以前フジサンケイグループがからむメディア向けイベントの取材誘致をしていた広報担当者が、サンケイスポーツ以外のスポーツ紙にもアプローチしていたことがありました。系列メディアの縛りについて知らなかったようで、事情を説明したところ驚いていました。

PRでメディア向けの記者会見やイベントを企画するとき、できるだけ多くのメディアに来てもらいたいのであれば、どの媒体ともかかわりのない企画にすることが理想です。

以前クライアントから「PRイベントの司会を元○○テレビのアナウンサーに依頼したい」と相談されたとき、筆者は特定のメディアの色がない経歴の人にお願いした方が良いとアドバイスしました。どこか特定の局で活躍されたアナウンサーがかかわる催しであれば、他の局は記者個人が興味を持ったとしても、社の方針で進んで取材することが難しくなってしまうからです。

逆にメディア自体が主催(後援)するような美術展や写真展などは、必ず記事や放送で紹介しなければならず、扱いも小さくできません。ある媒体一社にターゲットをしぼり、そこでの露出を目標の第一に置く場合は、戦略的に協賛や後援を依頼するケースもあります。

海水浴場にも「主催」はある!

最後に、記者になってから初めて知ったこの縄張りについてもう一つ。広報PRパーソンの皆さんは、海水浴場などにも「主催」があることをご存知でしょうか?

春先の気温がぐんと上がったある日、支局の近くの水泳場で季節ネタの雑感を取材しようとすると、同じ支局長にまた「あの水泳場は○○新聞が主催だから書いたらアカン」と止められました。

その後、海に出かけたときに意識してよく見てみると、なんと海水浴場の砂浜には新聞社の旗が立てられていました。公共の遊び場にまで縄張りがはられていることに驚きましたが、新聞社独特の文化ですね。

このようなメディアの縄張り意識やルールについて事前に知っておくと、取材誘致を目的としたイベント企画の際に機会損失を防げるのではないでしょうか。広報担当者の皆さんは、今度ぜひ「主催もの」の露出を意識して見てみてください。

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記事の執筆者
堀北 未来
堀北 未来
シニアPRコンサルタント・マネージャー

大学卒業後、地方新聞社の記者として取材や編集レイアウトを約10年間経験した後にPR業界に転身。自治体、省庁関連団体、人材コンサルティング、電子機器メーカー、証券など上場企業から中小・スタートアップ、行政まで幅広い業務を担当し、ベンチャー広報に入社。教育問題や地域活性化、働き方にからめたPRで全国メディアでの報道実績が多い。

堀北 未来
記事の執筆者
堀北 未来
堀北 未来
シニアPRコンサルタント・マネージャー

大学卒業後、地方新聞社の記者として取材や編集レイアウトを約10年間経験した後にPR業界に転身。自治体、省庁関連団体、人材コンサルティング、電子機器メーカー、証券など上場企業から中小・スタートアップ、行政まで幅広い業務を担当し、ベンチャー広報に入社。教育問題や地域活性化、働き方にからめたPRで全国メディアでの報道実績が多い。

堀北 未来