媒体研究~日本経済新聞編~
新人広報パーソンのための広報いろは。

媒体研究~日本経済新聞編~

40年のベテラン広報PRパーソンが伝授!

企業の広報PRパーソンにとって、まず報道してもらいたいメディアとして頭に浮かぶのが、日本経済新聞社の各媒体かもしれません。実際に大企業はもちろん、中堅、スタートアップに至るまで、多くの企業経営者が報道しもらいたがりますし、世の中に与える影響も非常に大きいと思います。

企業の広報PRパーソンにとって、まず報道してもらいたいメディアとして頭に浮かぶのが、日本経済新聞社の各媒体かもしれません。実際に大企業はもちろん、中堅、スタートアップに至るまで、多くの企業経営者が報道されたい媒体の一つで、世の中に与える影響も非常に大きいと思います。

本記事では、日本経済新聞について解説します。

「経済紙のリーディングペーパー」

大手企業からベンチャーやスタートアップ企業の経営者まで、報道してもらいたいと考える重要媒体です。筆者も日々、広報PRパーソンの方々から、この媒体の攻略法を尋ねられます。

日本経済新聞は、新聞名の通り日本経済新聞社が発行する全国紙唯一の経済紙。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞といった一般紙と比べると、株価欄をはじめ、経済や産業分野の情報が多いのが特徴です。

その他、日本経済新聞社の媒体は、日経ヴェリタス、日経MJ、 FinancialTimes、Nikkei Asiaなど。また日経電子版、NIKKEI Prime 、NIKKEI Financialの多くのオンラインメディアも展開しています。

周知の通り、今年3月末で創刊50周年を迎えた日経産業新聞が休刊となりました。よりデジタルメディアを強化する方針で、新たに「NIKKEI Prime」シリーズとしてNIKKEI Mobility、NIKKEI GX|Green Transformation、NIKKEI Tech Foresightを立ち上げ、現在ではNIKKEI FT the World、Minutes by NIKKEI、NIKKEI Digital Governance の6つのメディアで構成されています。

日本経済新聞社の所在地は、東京と大阪の2本社制。全国に名古屋、西部、札幌、神戸、京都の5つの支社があります。国外拠点は、世界で37カ所、記者や現地スタッフは約160人と、日本の新聞社では最大規模です。

日本経済新聞社、主な各媒体の特徴

多くのメディアの中でも、基本となる媒体について解説します。

  • 日本経済新聞(日経新聞)
    皆さんもご存じの通り、影響力が絶大な経済紙です。多くの名物コーナーがあります。企業のトップは、まずは「交遊抄」に、次に夕刊の「人間発見」、最後は「私の履歴書」に登場したいとよく言われるのではないでしょうか。

産業別に専門の記者を配置し、手厚く企業報道を行う媒体です。地域面も充実していて、地方企業であれば地元支局を狙うことで、報道されるチャンスが生まれます。ちょうど、今年4月にビジネス面を「ビジネスデイリー面」に刷新され、平日2面を原則3面に増ページされました。

  • 日経電子版

私が接している多くの広報パーソンの皆さんも、紙よりも電子版で読んでいる方が圧倒的に多くなりました。

2010年、日本経済新聞電子版創刊以来“デジタルファースト”を掲げ、大きな進化を遂げています。

スクープはもちろんストレートニュースも、昼夜を問わず電子版で報道しています。ちなみに、スクープのジャンルとして、社長人事、海外進出、企業の合併、倒産などを、記者は意識しているようです。

電子版でカバーできない専門情報は、NIKKEI Prime内で、NIKKEI Mobility、NIKKEI GX|Green Transformation、NIKKEI Digital Governanceが有料で創刊しています。こちらのシリーズもしっかりリサーチが必要です。

実は、業界・テーマ別にきめ細かく報じてきた日経産業新聞の強みを電子版にも活かし、トップ記事の下にある「NIKKEI BUSINESS DAILY」のバナーをクリックすると、「自動車」「資源エネルギー」「小売り」「建設・不動産」「スタートアップ」「生成AI」「核融合発電」「働き方改革」など、業界・テーマを選べるページに入れます。こちらはリサーチする時に便利です。

  • 日経MJ
    流通とマーケティングの専門紙です。毎週月、水、金曜日発行。衣食住遊など、生活に身近な記事が目立ちます。1971年、日経流通新聞が創刊。2001年の30周年を迎えるに当たり日経MJへ刷新されました。2021年で創刊50周年、日経MJに改称してからも20年経ったことになります。

MJは「マーケティングジャーナル」の略で、消費者がいまどう動いているか、企業は消費者とどのように関わろうとしているのかなど、生活、消費、サービス産業全般をカバー。ビジネスの動向、消費トレンドを紹介しています。

こちらも今年4月に紙面刷新もあり、テーマは「3つの消費」がよくわかる。「ローカルニュース」面を新設。地域発の話題のビジネスや新施設、食、エリアなど観光ビジネス情報。マーケター視点のコンテンツとして「日経クロストレンド」面を新設。「大型売り・ファッション」面を「リテール・ファッション」面に刷新されています。

  • 日経ヴェリタス
    金融情報、投資に関する専門紙です。資産運用ビギナーから、投資のプロまでが対象読者です。

編集体制について

日経新聞は経済専門紙として、朝日新聞や読売新聞などの一般紙があまり取り上げない、カバーしていない企業の動きを手厚く報道します。企業情報をストレートに伝えるには、日経新聞の方が向いている面があります。

ただ、日経新聞の記者は、やはり経営規模の大きい企業や上場企業を優先します。ベンチャーやスタートアップ企業にとって、日経新聞に取材してもらうには、それなりの工夫と努力が必要でしょう。

まずは、編集体制を知ることが重要です。2021年4月には、大きな組織改編がありました。東京本社編集局の各部・センターが廃止され、以下のような「ユニット」となりました。主な部署は次の通りです。

◎ビジネス報道ユニット(旧・企業報道部)
メーカーや小売り、サービス業など、企業全般の動向を取材する部署。このユニットは、「グローバル基幹産業担当」「テック担当」「調査・分析担当」「グローバル消費産業担当」「デジタル・新興企業担当」の5つに分かれます。企業広報としては、こちらのユニットへの情報提供が効果的です。

◎社会・調査報道ユニット(旧・社会部)
担当記者は、社会面に記事を書いています。毎日2ページある社会面をカバーし、世の中のトレンドも取り上げます。

◎生活情報ユニット(旧・生活情報部)
身近な生活に関わる情報をカバーしています。日経の生活情報記事は、人気が根強いようです。それもあってか、2017年3月から大きくテコ入れしてきました。

土曜の別刷「土曜日プラス1」も情報提供できるコーナーもあります。

ユニット内には旧女性面担当もいます。現在ダイバーシティ面として刷新されています。働く女性にまつわる情報を発信。この分野も力を入れており、毎週月曜日の朝刊1ページ掲載されています。以前は働く女性に加え、外国人との共生やLGBTQ、女性活躍、学校教育など“多様性”について広くカバーされている印象です。

その他は、政策報道ユニット(旧:政治部)、金融市場ユニット(旧:証券部)。地域報道センター(旧:地方部)、国際報道センター(旧・国際アジア部)といったユニットなどがあります。

攻略法のポイントは

言うまでもありませんが、各媒体の編集特性や傾向と各紙面・コーナーのリサーチが重要です。特に、自社に近い企業規模と関連業種の企業報道を知れば、近い紙面・コーナーが分かってきます。各媒体とも幸いにも署名記事が多く、担当記者も確認できます。また記者の関心事・企業も追跡可能です。つまり。記者の行動原理を知ることが何よりも必要となります。

特に日経産業の休刊を機に、日経電子版の大幅なリニューアルは日経報道を狙うチャンスでもあります。より幅広く、深くリサーチすることがその近道になります。

サービス資料のダウンロード

私たちが提供するサービスの紹介資料です。

記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴40年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

三上 毅一
記事の執筆者
三上毅一
三上 毅一
シニアPRコンサルタント・書籍プロデューサー

学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学/地域活性と事業構想の特別講師。2019年より広報初心者のためのオンラインサロン「ゼロイチ広報」講師。PR業界歴40年。上場企業、中堅・ベンチャー企業問わず、戦略策定から広報担当者の育成までこなすベテランPRマン。豊富なマスコミ人脈を活かし広報PRの指南役として、BtoBからBtoC企業を幅広く担当、500社以上の実績を持つ。

三上 毅一