ベンチャー企業・スタートアップのためのPR会社
ベンチャー広報の三上です。
これまで媒体研究として、マスメディアを中心に解説してきました。今回は、業界分野に特化した専門メディアについて解説いたします。広報・PR活動では、一般メディアを知ることと同様に、専門メディアを知ることも重要です。
業界専門紙・誌とは
特定業界内を専門にウォッチし、当該の業界関係者に向けて編集発行されるメディアです。一般メディアは、政治、経済、社会、生活、スポーツ、教育など総合的に把握できるのに対し、業界専門紙・誌は、さらに細かく各個別産業内の情報をカバーしています。刊行形態は日刊、週刊、旬刊、月刊など様々です。
歴史的に解説しますと、第二次世界大戦中、1941年の新聞統制で一県一紙体制とされ、現在の業界紙の多くは戦後に創刊されました。業界専門紙の団体としては日本専門新聞協会があります。
公益社団法人 日本専門新聞協会は1947年に設立され、83社が加盟しています。1980年代中ごろから東京だけで1000社以上が存在するという推定もあり、その数と種類の実態はきわめてつかみにくいのが実態です。
国内の新聞界は、一般日刊新聞の「日本新聞協会」と、専門新聞の「日本専門新聞協会」の両団体となります。これらの団体は、言論の自由を守り、権威の保持と社会的地位の向上を目指して活動しています。
業界専門紙・誌の分野とは
業界専門紙の定義は、日本専門新聞協会のホームページによれば、「政治、経済、文化、社会の各分野に必要な専門情報を提供しており、その記事は一般紙と異なる深さを持ち、産業・経済・教育・文化の各分野の発展向上に寄与している」としています。
発行されている分野も多岐にわたり、業種別・業態別では「鉄鋼・金属」「輸送機器」「機械・電子部品」「食品」「物流・運輸・交通」「小売・流通」「電機・通信」「化学・化成品・ゴム」「資源・エネルギー」「紡績・繊維」「紙」「金融・税務」「広報宣伝」「農林水産業・畜産」など様々な分野です。
日本専門新聞協会ホームページ上には加盟媒体も紹介されていますので、皆さんの会社をカバーしてもらえる媒体を調べる参考にして下さい。
業界専門紙・誌にも記者クラブが?
一般メディア同様に、業界専門紙・誌が加盟している記者クラブが存在します。協会加盟紙は、衆・参両院内の国会記者会をはじめ、関係省庁や主要機関にそれぞれ専門紙記者会を設置しているほか、取材制限のある特別行事においても取材上の便宜を供与されるなど、取材網を確立しています。
例えば、医薬系企業が利用できる厚生労働省の記者クラブがあります。厚生労働記者会は一般紙やテレビ局が加盟し、労政記者クラブには業界専門紙が加盟しています。
企業広報と業界専門紙・誌との関り
企業の広報パーソンにとって、一般メディアと同様に重要なメディアとして位置づけています。一般メディアと違い、広範なtoC・生活者への訴求は期待できませんが、業界に特化したtoB・いわゆるコアターゲットには訴求できるメディアです。また、一つの報道でも、より専門性が高く、深堀した報道をされる点が強みとなります。
私もこれまで、様々な分野の業界専門記者と関わってきました。私の場合は、PRエージェンシーとして企業の広報コンサル業務となります。担当企業には必ず業界記者がいて、ウォッチしています。業界の基礎的な知識や専門的な情報を知るうえで、担当企業の広報担当の方から業界記者を紹介され、ヒアリングする事が大変勉強になりました。
なかなか、一般メディアの方に頻繁に接点がもてない事もあり、またその業界に特化して情報取集をされていますので、一般メディアよりも早く情報を把握されています。業界トレンドや一般メディアではカバーできない業界・企業情報もヒアリングさせて頂きました。
親しくなった記者とは、業界動向について情報交換して、広報戦略となるヒントを見出して、戦略に活かしています。また、我々広報PR業界にも近い存在で、私の新人時代から業界記者の方々が、広報PRパーソンとして転職され活躍されているケースも多数あります。
業界専門紙・誌の攻め方や関わり方は
ベンチャー・スタートアップ企業の広報パーソンの方は、「とにかく、自社が全国紙やテレビに報道されたい」と切望されます。以前も解説しましたが、プレスリリースを作成し、直ぐに全国紙やテレビに報道される確率はかなり低く、ほぼ皆無でしょう。
一般メディアは、上場・業界に影響力もたらす大企業を優先的にウォッチしています。そのため、これら企業には編集体制として記者も配置されています。
まず攻めるべき分野は、業界専門紙・誌です。この分野で多くの報道を積み重ねていけば、徐々に業界で知られ、注目されていきます。その過程から、次のフェーズとして一般メディアへ戦略的に攻めていく事が報道される早道にもなります。
◎攻め方は…
・情報提供される媒体を事前に把握した上で、コンタクトをとって下さい。自社情報に関わる分野に入っているので、媒体調査もされず直ぐにコンタクトを取るのは避けましょう。
全て媒体購入はされずとも、せめて各媒体の読者属性や紙面構成、編集方針などを把握して下さい。最近は電子版も充実しています。また、広告の問合せコーナーから媒体情報を入手できるケースもあります。
PRエージェンシーでは、「月刊メディア・データ」を活用しています。これは、本来は広告媒体情報の雑誌です。広告代理店・企業の広告・宣伝・マーケティング等の関係者が基礎資料として購入するものです。媒体の概要・広告料金・発行部数・読者データなどが収録されています。
・コンタクト方法は、一般メディアと違い、比較的代表電話からでも記者まで繋げてもらえます。初コンタクトの場合は、自社概要と情報発信したい内容を伝えれば、親切に対応頂けるケースが多く、躊躇せず積極的に連絡して下さい。
現在コロナ禍ですが、可能な限り面談されますと、親切に対応して頂けます。また、一般メディアと違い、異動や担当替えも頻繁にありませんので、長年にわたり継続したコミュニケーションを構築できるのも利点です。
スタートアップ・ベンチャー企業分野に関わる業界専門紙・誌は
日頃、産業経済紙・ビジネス誌系は皆さんもご存じでしょうが、ここでよく考えてみましょう。
スタートアップ・ベンチャー企業では、資金調達、起業時での自社および事業の訴求、採用広報等、様々な視点での広報活動があります。自社の業種・業態をカバーされている業界専門紙・誌を調査してみましょう。それらから取捨選択し、アプローチしてみて下さい。
実は、私がプロジェクト研究のゲスト講師をさせて頂いている、学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学では、事業構想に関する専門メディアを発行しています。
そもそも「事業構想」とは何か。“新事業の開発”です。言い換えれば「ベンチャー(起業)の計画の策定」「地域活性化の構想計画の策定」などを意味します。つまり皆さんにも関わる分野でしょう。起業の方法には様々あります。自身や仲間と考える。専門学校や大学等の教育機関で学ぶ。銀行、行政などのアドバイスを受けるなど。
学校法人先端教育機構は、2012年東京・南青山に事業構想大学大学院を開学しました。「月刊 事業構想」「月刊 先端教育」なども、出版しています。皆さんご存知の「広報会議」「宣伝会議」「販促会議」「ブレーン」は、グループ会社の株式会社宣伝会議が発行しています。
私のクライアントも「事業構想」「先端教育」「広報会議」に紹介頂いています。特にスタートアップ・ベンチャー企業の情報をカバーされているのが「事業構想」となります。
企業活性、地方創生、イノベーション分野を広くカバーしています。地方創生や業務変革を志す自治体、官公庁に圧倒的リーチされる「地方創生×イノベーション」No.1メディアです。創刊は2012年、50,000部で毎月1日発行されています。
コロナ禍において、よりDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みこれに伴い、様々ビジネスが国内回帰や新ビジネスが生まれてきています。皆さんの企業情報もきっと当誌でも報道されるチャンスはあります。