スタートアップのためのPR会社
株式会社ベンチャー広報の三上です。
4月の新年度から数カ月。新人の皆さんは現場を体験され様々な課題や悩みを抱えています。特に、コロナ禍という未知の領域での広報活動は、皆さんから様々な問合せを頂いています。
今回は、企業広報活動で重要なメディアである週刊ビジネス誌について、最近の動向を解説します。
週刊ビジネス誌の4大誌とは
私はメディアを知る上で基本的な参考書が、“新聞”と教育され、新聞の事が理解できたら週刊ビジネス誌を勉強するように指導されました。特に、コーポレートコミュニケーション=企業広報に携わるうえで、週刊ビジネス誌(経済誌)が大切なメディアと教わりました。
その中で代表的な4大誌として「日経ビジネス」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」「週刊エコノミスト」があります。
新聞と週刊ビジネス誌の違いは
新聞は、まず速報性を優先させます。週刊誌は週刊単位で、政治や経済ネタを中心に掘り下げていくメディアとなります。また、各号(毎週)ごとに大特集から小特集とテーマを設け掘り下げていくスタイルになります。
新聞と大きく違う点は、記者クラブに加盟していない点です。新聞の情報源は記者クラブ経由による情報が大きく占めます。しかし、週刊ビジネス誌は独自の取材網で報道させていく点が、大きな違いです。
週刊ビジネス誌 各媒体の特徴について
- 週刊ダイヤモンド
1913年創刊の歴史と伝統を誇る週刊ビジネス誌です。創刊当時から、企業産業界の出来事を数字・データで説明・報道していく。
データジャーナリズムが基本となります。週刊ビジネス誌の中でも、書店で一番売れています。
斬新な特集企画、独自の市場調査、精密でタイムリーな経済・産業・起業レポート、多彩な連載記事・コラムなどによって、ビジネス活動に有益な情報を提供しています。
独自の切り口による徹底した取材記事と豊富なデータを、見やすいビジュアルで構成する誌面が印象的です。また、投資情報や個人マネーに関する内容が多く、ビジネス誌の中ではエンターテインメント性も高めになっています。
旬なテーマに切り込んだ特集で図・グラフ・ランキングなどの情報があり、経済情報を「わかりやすく」伝えることに工夫している印象です。財務・決算等、専門用語が多く、数字が理解することが難解ですが、徹底的に分かりやすく解説しています。また、年に数回スタートアップ特集もあります。
最近では、6月20日号「特集コロナ倒産連鎖 衣・食・泊存亡ランキング」が印象的でした。経営破綻をしたレナウンが、編集部分析でアパレル部門のワースト1位となり広報に取材申し込から8日後に民事再生法の適用を申請したくだりは、リアリティのある読み応えのある特集でした。
- 日経ビジネス
日経BPが発行。主要ビジネス誌の中でも最大の読者数を誇ります。
1969年創刊と比較的新しい雑誌です。日経新聞グループとして、日経新聞記者⇔日経ビジネス編集者がお互い出向する相互関係もあります。
特徴として、定期購読専用の雑誌になっています。書店はビジネスマン街や大きな書店のみ販売しています。誌面内容は、マクロ経済からミクロ経済まで俯瞰的な視点で、ビジネスパーソンとして知っておきたい内容を網羅的に特集していくような印象があります。
誌面には、独自のビジネスモデルで成長している、スタートアップ・ベンチャー企業でも紹介してもらえる名物コーナーもあります。
- 週刊東洋経済
1895年に創刊され100年以上の歴史のある週刊ビジネス誌です。
会社四季報などを発行している東洋経済新報社が発行元です。比較的、上場企業報道が多い印象があります。為替情報からエンターテイメントまで市場を読み解くことができ、株式投資系・企業分析のテーマも多く紹介されています。
- 週刊エコノミスト
1923年に創刊。毎日新聞社が創刊したビジネス誌です。(現在は、毎日新聞社の分社によって毎日新聞出版㈱に移管されました。)
タイトルの通り、マーケットや実体経済について独自の報道をされています。金融経済をグローバルな視点で分析され、資産運用関連の情報も豊富です。
スタートアップ・ベンチャー企業でも報道のチャンスあり!
新人の皆さんにとって、これらのメディアはハードルが高く自社は取り上げてもらえないと諦めている方も多いのではないでしょうか。
いえいえ、そうでもないんですね。新聞メディア同様にしっかりと媒体調査をされていれば、必ずチャンスはあります。
それでは、攻め方のポイントをお教えしましょう。
- その1:誌面のベンチャー企業・スタートアップ企業紹介コーナーを探す。
各媒体には、新たな市場開拓をした企業や他社にはない独自の技術を持っている企業を紹介するコーナーがあります。
1冊雑誌を購入して頂ければと、皆様でも見つける事ができます。1回で紹介基準が分からなければ次号も買って、紹介されている企業の傾向を読み取り判断できます。
- その2:特集面で攻めてみる。
毎号の特集面で、“コロナ禍、ベンチャー・スタートアップ、シェアリング、副業、5G、農業、人事、HRテック、ITO、サブスク、テクノロジー、できる英語”と、様々なトレンド特集が組まれています。特に“コロナ禍”の切口は各誌多くの誌面を割いています。
自社に近い特集面を確認し、特集記事内に取材者名が確認できます。
これらの方へ直接アプローチし、今後も同様のテーマでの企画の可能性があるか。或いは特集で紹介されている他に自社で関係した取組みや事業予定があれば、情報提供をされるのも効果的かと思います。
コロナ禍でデジタルファーストが進んでいる?
皆さんもお気づきかと思いますが、各誌とも雑誌が比較的薄い印象を持たれている方も多いのでは。
ここ数年、新聞媒体のデジタルファースト(Digital First)化が顕著になってきています。無論、週刊ビジネス誌もこの取組みは進んでいます。
最近のトピックスとしては、日経ビジネス電子版がスタート。また週刊ダイヤモンドは昨年4月に、週刊ダイヤモンド編集部とダイヤモンドオンライン編集部を統合。総合ビジネス誌から業界各分野の専門的な情報発信できるメディアを目指すと聞いています。
東洋経済は、東洋経済オンラインを2003年6月にスタート。当時の編集長が講師でセミナーを受講した記憶があります。米国のメディアサイトを参考にされた話を伺いました。
各webサイトとも、誌面連動記事とサイトオリジナル記事を様々な分野で報道しています。こちらも誌面同様にサイト内のコーナーについても調査し、情報提供も可能です。
長きにわたりお付き合いしているビジネス誌の担当の方と接して、経験の中で以下の点がポイントになります。
- コロナ禍の編集体制について
最新のコロナ禍の編集体制について、あるビジネス週刊誌の編集長や記者の方に話を伺うことができました。
・緊急事態宣言以降から現在も、完全にリモート体制を敷き取材、原稿執筆、レイアウト確認等全て自宅で対応されているケースと、7月より週に数日編集部に出社して、他自宅対応されている編集部もあります。
・取材もまだリモート対応が多く、企業サイドの了解があれば面談での対応するケースもあるとのことです。
・ある編集部は、今後コロナ禍の第2波も想定して、既に大特集は年内分を確定済。出社せずも発行できる体制を整えていると聞きました。
・私の今後の予想は、平時でもデジタルファーストは進んでいいましたが、コロナ禍のタイミングにより一層デジタルファーストが進みます。
皆さんからみるとデジタル媒体での報道増加により、様々な特集やコーナーの新設が増えることから、デジタル媒体での取材・報道獲得のチャンスが生まれます。また記者の取材体制もこれまでのアナログ体制からよりデジタルに移行していきます。“デジタルファースト”から“デジタルファーストの徹底”に激変する時代に入りました。
皆さんにとっては、デジタルメディアのリテラシーが問われる時代となります。
コロナ禍の記者と上手く付き合うポイントは?
コロナ禍前は・・・
- 情報提供は1~2か月先の情報を提供
週刊誌の編集スケジュールから考えると、遅くとも2~3週間前に記者に提供していく。大特集なら1~2か月先に情報提供が理想と言われていました。
- 自社情報だけでなく、業界動向や競合他社情報も知っておくこと
週刊ビジネス誌の担当者は、新聞・経済部同様に業界別に担当しています。
また、新聞に比べると担当期間も長く担当されている方が多い印象です。大・中・小の特集企画から、コーナー担当と幅広く担当され、担当業界の企業情報は幅広く、また深く知りたいという傾向があります。
「業界のトレンドは。市場全体の今後の見通しは。自社技術と関連した技術を持っている企業は。」と、業界通になれば、企画のヒントを探している時や取材先に困った時に、私へ連絡頂く事が頻繁にあります。編集会議での企画提案や取材先調査、スクープ取材と、いざという時に力になると感謝もされました。
- 編集スケジュールを知って、タイミングの良い時にコンタクトを
皆さんはまずコンタクトをとる時は、電話やメールとなります。
週刊誌の場合、週初めに編集会議があり、デスクに居る確率が高い事から、コンタクトをとる時は、極力この時期を意識してコンタクトをとるようにしています。
週末は、取材の追込み・原稿締切と多忙の時期となる事から、意識的に避けています。
とこれまでは、このような業界常識がありました。
コロナ禍後は・・・
しかしコロナ禍に入り、編集体制も激変し記者の取材行動もこれまでとは違う行動となっています。
そもそも、編集部に記者が常駐されていません。私もこれまでの経験知は役に立たない時代に入りました。私も現在試行錯誤が現状です。これまでの記者人脈をフル活用し、携帯電話やメールコンタクトで凌いでいます。
これからは個々のネットワーク力が問われる時代に入ります。