「社内広報」と「社外広報」のシームレス化
CEOブログ
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「社内広報」と「社外広報」のシームレス化

長引くコロナ禍によって、企業を取り巻く経営環境が大きく変わりました。だからこそ、広報PRのあり方も変化すべきではないでしょうか。会社の内と外の線引きが難しくなっている昨今、これからは自社のありのままをフラットかつオープンに伝える情報発信が主流になると考えています。

会社の境界線があいまいに

コロナ禍をきっかけに、リモートワークで働く人が急増しました。社員の働く場所が分散することで、社員の一体感の維持や会社への帰属意識の低下が、企業経営の大きな課題となっています。

また、働き方の多様化によって、どこまでが社内で、どこからが社外か、その境界線があいまいになってきました。例えば、社内報を見せる対象をどこまでにするのか。正社員だけで良いのか、契約社員や派遣社員まで含めるのか、内定者は? アルバイトは? インターン生は? 業務委託社員は? この線引きは非常に難しいです。

こうした経営環境の変化に対して、広報はどのように対応すべきでしょう。ご存知の通り、「PR」とは「パブリックリレーションズ」の略語ですが、パブリックリレーションズとは、ステークホルダーと良好な関係を築くための活動であり、これこそが広報の本質です。

ステークホルダーは、生活者、顧客、取引先、株主、地域社会など、社外の人だけではありません。「社員(やその家族)」も同じステークホルダーです。であるならば、そもそも、「社内広報」「社外広報」を分ける必要があるのでしょうか。

「ありのまま」を発信する広報が主流になる

これからの時代、自社のありのままの姿を、社内外問わず、フラットかつオープンに発信する広報が主流になると思っています。つまり、社内広報と社外広報のシームレス化です。

例えば、筆者が管理本部長として広報を統括している株式会社ガイアックスには、社内報がありません。その代わり、自社のオフィシャルホームページをオウンドメディア化して、通常、社内報に掲載するようなコンテンツも、全てそこで発信しています。ホームページのブログですから、社内や社外問わず、全てのステークホルダーに見てもらえます。

そして、そこには、意図的に、社員のインタビューを多数掲載しています。これは、以下の3つの効果を狙ったものです。

1)インタビューが掲載された社員自身のモチベーションアップ
自分の仕事ぶりや想いがインタビュー記事になり、それを他のスタッフや家族含めたくさんの人に見てもらうことで、会社への帰属意識や仕事のやる気が高まります。

2)スタッフ同士のつながりの強化
ガイアックスは社員やインターン生、業務委託を含めた広義のスタッフという意味では、200名を超える組織になります。

これくらいの規模になると、他の部署のスタッフがどんな仕事をしているのかを全て把握するのは不可能です。リモートワークが進めばなおさらのこと。そんな中でも、インタビュー記事があれば、スタッフ同士が、相手の人柄や仕事内容、仕事への想いを共有でき、オンライン・オフライン問わず、コミュニケーションが取りやすくなります。

3)採用効果
インタビュー記事を、就活中の大学生や転職希望の社会人に読んでもらうことで、採用活動がやりやすくなります。実際に、オフィシャルホームページをこの形に変えてから、ガイアックスの求人に対するホームページ経由のエントリーがとても増えました。

また、ガイアックスでは社内イベントも色々な工夫をしています。四半期ごとに行っている「全体会議」は、社内イベントでありながら、社員の家族、ご友人、お取引先、お客様、就活中の学生など、社外の方含めて誰でも参加可能にしています。

つまり、全てのステークホルダー対して、全社会議を開かれたものにしているということです。この全体会議は、会場での直接参加とライブ配信によるオンライン参加が選択でき、当日、リアルタイムに参加できないスタッフ用に、録画した動画の配信も行っています。これは、働く場所や時間を問わず、全てのスタッフに同じメッセージを届けるための工夫です。

同じメッセージなら炎上も避けられた

このような取り組みと対照的なのが、以前書いた、ビジネスYouTuberマコなり社長の炎上事例ではないでしょうか。マコなり社長は、社外に対して、自分のYouTubeチャンネルで会社の好調ぶりを発信しておきながら、同時に、社内では、社員に対してリストラのスピーチをしていました。

もし彼が、社内・社外を問わず、全てのステークホルダーに対して同じメッセージを発信していれば、あの炎上は起きなかったはずです。“社内広報と社外広報のシームレス化”は、ステークホルダーと良好な関係を築き、(広義の)社員のモラルやモチベーションを高め、危機管理対策にもなる、とても合理的な広報のやり方だと思います。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人