中小・ベンチャー企業の「経営に貢献する」PR会社の選び方
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中小・ベンチャー企業の「経営に貢献する」PR会社の選び方

PR会社の役割は、企業を取り巻くステークホルダーと良好な関係を作り、評価や評判を高めるための活動支援です。では、実際にPR会社に広報支援を依頼する際、どのような点に気を付けて、パートナー選びをすればよいのでしょうか?中小・ベンチャー企業のような限られた予算でも経営に貢献するPR会社の選び方を解説します。

「PR」は公衆との関係性を維持する営み

「PR」とはPublic Relations(パブリック・リレーションズ)の略語です。
その意味について、ウィキペディア(Wikipedia)には次のように書かれています。「パブリック・リレーションズは主体と公衆の望ましい関係を構築・維持する営みである。個人や組織は社会の様々な人々をステークホルダーとして持つ。個人・組織の目標を達成するためには彼らと良好な関係を築くことが不可欠である」。

しかし、PRという言葉は、「自己PR」(自分を売り込むこと)、「Promotion」(販売促進)という意味で使われることがあります。新聞や雑誌の紙面、WEBサイトでも“これは記事じゃなくて広告ですよ”ということを明示するため、「AD」「Sponsored」と同じ意味で「PR」と表記することがあります。この場合は、「PR=広告」という意味です。

まぎらわしいですが、広報の同義語として「PR」という言葉を使った場合、それは、Public Relations(パブリック・リレーションズ)の略であり「宣伝広告」という意味ではありませんので注意してください。

「PR会社」と「広告代理店」は役割が違う

PR(Public Relations)と広告(Advertisement)は、どう違うのでしょうか。
広告は「Buy me」、PRは「Love me」だと言われます。広告の主目的が、商品サービスの販売であるのに対し、PRの主目的はレピュテーション(評価・評判)の向上です。

PR活動は、生活者、顧客、従業員、株主、取引先、地域社会など、あらゆるステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を作り、信頼や信用を獲得することを目的にします。広告は、新聞・雑誌・テレビなどメディアの広告枠を企業が購入し、有料で広告を掲載します。PRの場合、企業が発信する取り組みを、メディアが自主的に取材して報道するため、企業側はメディアに何か費用を支払うことはありません。

広告を取り扱うのは広告会社(広告代理店)で、PRの専門家はPR会社(PR代理店)です。その他、広告とPRでは、発信する情報の自由度、注目度、信頼度などの面で、多くの違いがあります。

広告

PR

情報発信方法 買い取った広告・CM枠の中で情報発信する メディアの記事・番組という形で情報発信する
発信する情報の自由度 伝えたい情報をほぼ100%コントロールできる メディアからの情報発信のためコントロールできない
コスト 割高(広告費・制作費) 割安(活動実費)
読者・視聴者の注目度 あまり注目されない(広告は無視、CMはカット) 注目される(視聴者が見たい内容だから)
視聴者の信頼度 企業が自社の商品・サービスを薦めても購入しようと思わない=手前味で信憑性にかける メディアという第三者が発信する情報なので信用する人が多い
発信する情報の基準 表現や装飾を自由にでき、販売促進に役立つ情報にできる 客観的事実に基づき正しい情報を正確にメディアに伝える

※これ以降は、広告(Advertisement)とPR(Public Relations)の意味の混同を避けるため、PRについて「広報PR」と表記します。

広報PRは経営戦略そのもの

このように書くと、「要するに広報PRは、お金をかけずにメディアで商品を宣伝できる、コストパフォーマンスの高い広告手段なんですね」という方がいらっしゃいます。あるいは、広告会社(広告代理店)とPR会社(PR代理店)を混同されている方も多いようです。

企業が広報活動を行うことで、自社の取材をしてもらい、自社商品やサービスについての記事をメディアに掲載してもらえば、それは確かに大きな宣伝になるでしょう。テレビ番組で数分間、商品が紹介されただけで、問い合せの電話がひっきりなしに鳴り、WEBサイトへのアクセスが集中してサーバーがダウンする、なんてことも実際に起こります。

しかも、こうした記事の掲載や番組での紹介は、あくまで“報道”ですから、費用(広告費)は原則かかりません。まさにマスコミを使って、無料で宣伝できるというわけです。このように、広報活動を行うことで、結果的に、商品サービスの売上が増えることはありますが、それは広報PRがもたらすメリットの一部にすぎません。

実は、広報PRを単にマーケティングの手段としてではなく、経営戦略として取り組むことで、企業は、より大きく多様なメリットを享受できるようになります。広報PRは、売上だけでなく、経営のさまざまな面に良い影響を与えるからです。

「PR」とは「Public Relations(パブリック・リレーションズ)の略語で、ステークホルダーと良好な関係を築き、企業や商品サービスの評価・評判を高めるための活動のこと」だと書きました。

実際に評価や評判が高まると、どんな良いことがあるのでしょうか。

  • 生活者や顧客は、信頼できる企業から評判の良い商品サービスを購入したいと考えるので、結果、売上が増えます。
  • 評判の良い会社には優秀な人材が集まります。
  • 会社と社員の信頼関係が強い会社は、離職率が低く、社員のモチベーションが高く維持されます。
  • 信用力のある会社は、金融機関や投資家から有利な条件で資金調達ができます。
  • 評判の良い会社や商品サービスは、ネットで誹謗中傷されることがありません。むしろ、良好な口コミが広がります。

『ブランドは広告でつくれない』(アル・ライズ 、ローラライズ著)という名著でも語られている通り、広告でこれらを実現するのは困難でしょう。広報PRとは、企業のさまざまな経営課題を同時に解決できる効果的な経営戦略なのです。

PR会社選びで失敗しないための注意点

上場しているPR会社や、費用の高いPR会社ならよい仕事をしてくれるはずだと考える人が多いのですが、実態はそうではありません。「大手PR会社に広報支援をお願いしたのだけど、完全に期待はずれだった」とか、「有名なPR会社に高いお金を払ったのに、あまりマスコミに露出しなかった」といった声もよく耳にします。

良いPR会社、悪いPR会社というのはありません。大切なのは、自分の会社に合ったPR会社を選ぶことです。ポイントは3つあります。

1)自社の企業規模に合っているか

年商何千億・社員数数千人の大企業と、年商2億・社員20名のベンチャー企業では、広報の手法やノウハウが大きく異なります。業界トップ5に入るような大手総合PR会社は、クライアントのほとんどが大企業で、大企業のニーズに合わせた料金・サービス体系になっています。あなたの会社がもし、社員数50名以下の小さな会社であれば、大手総合PR会社を選ばない方が良いでしょう。ミスマッチになる可能性が高いです。

2)自社の業種に合っているか

中堅以下のPR会社の多くは、得意な業界や専門領域を持っています。「女性向け消費財に特化している」「IT業界に強い」「医療関連のクライアントが多い」「飲食店のPRが専門」などです。あなたの会社が属する業界を得意とするPR会社がもし見つかれば、そのPR会社は有力な選択肢の一つになります。

3)自社のニーズに合っているか

あなたはPR会社に何を期待していますか? 「しっかりした戦略を作りたい」「自社の報道を最大化したい」「プレスリリースを書いて欲しい」「SNSの炎上対策をしたい」「戦略作りから実行まで広報を外注したい」。自社がPR会社に依頼したい内容や期待するアウトプットを明確にし、それが得意なPR会社を選びましょう。

“小さな会社”向けのPR会社とは

まず、料金が高くないことが大前提です。基本的に、PR会社はWEBサイトなどでサービス料金を開示していませんが、業界大手のPR会社は、だいたい相場は決まっています。業務委託(PR戦略の策定からプレスリリース作成、メディアコンタクト、取材獲得など、広報業務をすべて依頼する外注形式)の場合、月額60万円~100万円での最低1年契約が多いです。

しかし、スタートアップやベンチャー企業では、広報PRにそこまで予算を割けないと思います。広報担当者を社員として雇用する場合の人件費と比較して考えれば、PR会社に支払う外注費は月額50万円くらいが妥当でしょう。

中堅以下のPR会社の中には、月額50万円以下でリテナー契約を提供している会社もありますので、ぜひ探してみてください。ちなみに、当社は、スタートアップ・ベンチャー企業専門のPR会社ですので、リテナー契約を月額45万円で提供しています。

「メディアプロモート」で攻めの広報PRを

次に重要なポイントは、「攻めの広報」ができるかどうかです。大企業の場合、知名度がありますので、広報担当者が何もしなくてもマスコミから取材依頼が入ります。だから、報道獲得は難しくありません。つまり、受け身でも広報活動が成立してしまうのです。

一方で、無名のスタートアップ・ベンチャー企業の場合、そうはいきません。何もしなければマスコミから取材が来ることはありませんし、プレスリリースを定期的に発信しても、マスコミからの反応はゼロという場合がほとんどでしょう。

そこで、広報担当者は、メディアの記者や編集者、テレビ番組の関係者に対して、電話やメール、面会を通じて、自ら積極的にアプローチを行います。これがPR業界で「メディアプロモート」と呼ばれる手法です。無名のスタートアップ・ベンチャー企業の広報活動においては、このメディアプロモート=「攻めの広報」が必要不可欠になります。

このメディアプロモートは広報活動の中でも、かなり専門性と難易度の高い作業です。ベテランのPRパーソンの中には、プレスリリースを書いたりPR戦略の立案はできても、メディアプロモートは全くできない、という方も少なくありません。

特に、大企業のクライアントが多いPR会社にはその傾向が強いようです。メディアプロモートを通じた「攻めの広報」ができるかどうか。小さな会社がPR会社を選ぶ場合には、その見極めが非常に重要になります。

PR会社は経営課題を解決するパートナー

小さな会社が広報PRに初めて取り組む場合、「社内に広報担当者を置いて広報を内製化する」「PR会社などに委託して広報を外注する」という2つの選択肢が考えられます。内製化が理想ではあるものの、広報部門をゼロから立ち上げるのは簡単ではありません。そこで、初期段階ではPR会社への外注を選択することが多いでしょう。

まず前提として、広告会社(広告代理店)とPR会社(PR代理店)の役割は本質的に異なります。広報PRについては、その専門家であるPR会社に相談するようにしてください。
そして、PR会社といっても色々な特長の会社があります。「大手企業の実績多数」「メディア経験者が多い」「戦略PRを提供」「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用した広報が強み」などです。

PR会社選びにおいて、こうした表面的なところだけを見ていると失敗します。なぜなら、広報PRやSNS、マスコミには詳しいけれど、経営のことはよくわかっていないPR会社が意外と多いからです。PR会社が広報PRについて詳しいのは当たり前ですが、専門バカでは困ります。広報PRは、あくまで経営課題を解決する手段にすぎないのですから。

PR会社は、広報PRという手段で自社の経営課題を一緒に解決してくれるパートナーです。ぜひそういう視点で、PR会社を選んでください。経営視点をしっかり持ちながら、広報PRの現場の実務が確実にこなし、期待する成果を出せる――。そんなPR会社が理想だと思います。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人