スタートアップのためのPR会社
株式会社ベンチャー広報
代表取締役の野澤直人です。
2020年は新型コロナウイルスの感染が猛威をふるった一方で、あらゆる業種・業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進んだ一年でもありました。
コロナ問題は2021年もしばらく続くかもしれません。でも3年後にはおさまっているでしょう。しかし、DXは今後も間違いなく進みます。企業の広報担当者として、DXにどう対応していくのか。これはご自身が所属する会社にとっても、広報としてのご自身のキャリアにとっても重要です。
広報PRのDXというと、メール配信ツール、SNS運用ツール、CRM(顧客関係管理)、マーケティングオートメーションなどのデジタルツールを活用して広報活動をすることだと思うかもしれませんが、それは本質ではありません。
DX時代の広報について、「媒体」「情報の内容」「コミュニケーション」の3つの点から、私なりに考察してみたいと思います。
【1】「媒体」
数年後には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオという4マス媒体=マスコミに詳しいだけでは、企業の広報担当はつとまらなくなる可能性があります。DX時代には、マスコミと同じかそれ以上に、ネットメディアを活用した広報活動が重要になるからです。
そのためにまずやるべきは、ネットメディアを調査分析してその理解を深めること。マスコミ広報と同様に、媒体についての深い知見がなければ、適切な広報活動はできないからです。「ネットメディア」と一口に言っても、多種多様な媒体があります。これを広報活動ができるレベルで網羅的・体系的に理解しなくてはなりません。
例えば、2020年11月に弊社が開催したオンラインセミナーにおいて、NewsPicks・金泉前編集長はネットメディアを以下のように整理されていました。大変参考になりますので、以下に引用します。
・インフルエンサー(SNS、インスタグラマー、ユーチューバー、ブロガー等)
・デジタルメディア(BuzzFeed、ハフィントンポスト、ビジネスインサイダージャパン等)
・レガシー系デジタル(朝日新聞デジタル、東洋経済オンライン等)
・アグリゲーター(Yahooニュース、スマートニュース等)
※補足:金泉前編集長の解説では、NewsPicksは上記の4つの要素を包括している媒体であるとのことです。
【2】「情報の内容」
次はWHAT(伝える情報の内容)についてです。マスコミ(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)を活用した広報活動をする上では、マスコミが報道する価値を感じる情報=ニュースバリューのある情報を広報担当者が適切に作れるかが重要でした。
ネットメディアに対しても、媒体側がどんな情報を求めているかを理解し、それに合わせて情報(コンテンツ)を作る、という基本原則は同じです。
ただし、ネットメディアについては大きく「オンラインメディア」と「インフルエンサー」の2つに分けて考える必要があります。先のNewsPicks・金泉前編集長の定義にあてはめると「オンラインメディア」は以下の3つになります。
・デジタルメディア(BuzzFeed、ハフィントンポスト、ビジネスインサイダージャパン等)
・レガシー系デジタル(朝日新聞デジタル、東洋経済オンライン等)
・アグリゲーター(Yahooニュース、スマートニュース等)
これらの媒体が求める情報は、基本的にマスコミが求めるものと同じと考えていいでしょう。なぜなら、レガシー系デジタルとアグリゲーターが掲載するコンテンツはマスコミ報道が元ネタですし、デジタルメディアの中の人(記者・編集者)の大半は、新聞社・雑誌社からの移籍組だからです。従って、「オンラインメディア」については、情報(コンテンツ)作りにおいてマスコミ広報で培った知見が十分活用できます。
一方、インフルエンサー(SNS、インスタグラマー、ユーチューバー、ブロガーなど)には異なるアプローチが必要です。彼らはマスコミが求めるニュースバリュー・報道価値とは全く違った基準で情報を探しています。当然、マスコミ向けに作成したプレスリリースを、そのままインフルエンサーに提供しても無意味です。インフルエンサーを使った広報活動をするなら、そこに最適化した情報の作り込みが必要になります。
【3】「コミュニケーション」
最後にHOW(情報の伝え方)についてです。過去数十年間、広報活動におけるコミュニケーションの4大手法は、FAX、郵便、電話、面会(メディアキャラバン・会食等)でした。これが昨年くらいから、コロナ拡大+DX推進によって、大きく変わりつつあります。
メディア関係者も在宅勤務が増えていますので、FAX・郵便でプレスリリースを送っても見てもらいづらいですし、会社に電話をかけてもつながりません。コロナ感染対策のためメディアキャラバン、取材、記者会見もオンラインで実施することが増えています。
これからは、メール、チャット、メッセンジャー、LINE、Zoomなどを活用して上手にコミュニケーションを取れることが、優秀な広報担当者の必須条件になるでしょう。こうしたオンラインツールはパーソナルな性質が強く、個人対個人のコミュニケーションが基本になります。知らない人からの情報は受け取らないため、プレスリリースの一斉配信のような不特定多数とのコミュニケーションはあまり機能しなくなるでしょう。
記者、編集者、テレビのディレクター、ネットメディアのライターからインフルエンサーに至るまで、広報担当者としてワン・ツー・ワンで個別にコミュニケーションを取れる人が何人いるか。DX時代だからこそ、それが今まで以上に重要になってくるはずです。
こうして考察してみると、DX時代においても広報活動の本質は変わらないことがわかります。「媒体についてしっかり調査分析し」「その媒体が求める情報を作り込み」「ワン・ツー・ワンで個別に提供する」。結局、やるべきことはこの3つですから。
ただし、広報担当者としてDX時代に適応するためには、マスコミ広報の知見をベースにしつつ、オンラインメディアやインフルエンサーなど、自社の広報活動に有効な新しい媒体とのつながりを増やす努力が不可欠です。