PRパーソンが歩むべき「T字型人材」としてのキャリアとは
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PRパーソンが歩むべき「T字型人材」としてのキャリアとは

スタートアップのためのPR会社 ベンチャー広報の野澤です。 前回は、日本と海外におけるPR会社の違いとPR会社のあるべき姿についてお話しました。 しかし、現状のままでは実現できないでしょう。なぜなら、PR会社にその力がな…

スタートアップのためのPR会社 ベンチャー広報の野澤です。

前回は、日本と海外におけるPR会社の違いとPR会社のあるべき姿についてお話しました。

しかし、現状のままでは実現できないでしょう。なぜなら、PR会社にその力がないだけでなく、優秀な人材である「T字型人材」も不足しているからです。このT字型人材不足には日本のPR会社の体制に関係があるのですが、これはPR業界だけの問題ではなく、クライアントにとってもPRパーソンにとっても大きな問題をはらんでいます。

今回はこれらを踏まえた上で、PR領域における理想のT字型人材像と、T字型人材への成長ステップついて書いていこうと思います。

PR領域に不足しているT字型人材

一般的に、T字型人材であることは優秀だと言われます。T字型人材とは、一つの領域に対する深い知識や経験を持ち、さらにそこに関連する他の領域に関しての知見も兼ね備えている人を指します。アルファベットのTの縦棒を専門性、横棒を幅広い分野の知見に見立てて、T字型人材と呼びます。

では、PR領域においてT字はどう描かれるのでしょうか。

こちらが、私が考えるT字型人材です。

この図のように「PR(パブリック・リレーションズ)」を縦軸におき、関連するジャンルとして「ソーシャルメディア」「デジタルマーケティング」「WEB制作」「デザイン・印刷」「販売促進・セールスプロモーション」「各種広告」などのコミュニケーション全判の知識やスキルを横軸として持っておく必要があります。

このT字に表されるように、本来PR会社で働くのであれば、PRだけでなくコミュニケーション全般のことも理解しておくべきです。なぜなら、PRはコミュニケーション要素の一つに過ぎないからです。

PR活動(例えばマスコミ広報という領域)を行うにしても、コミュニケーション全体を捉えた上でどうPRするかの視点が必要ですし、PR領域だけしかわからないPRパーソンでは、本当の意味で価値のあるサービスをクライアントに提供するのは難しいでしょう。

T字型人材不足を作り出した日本のPR会社の体制と、そこに潜む問題

冒頭に述べたように、PR領域においてはT字型人材が不足しています。実は、これには日本のPR会社の構造的問題が大きく関係しているのです。

日本のPR会社では、3人くらいがチームとして動くことが多いといわれます。1人はアカウントエグゼクティブとしてクライアントとの窓口を担当、1人がプロモーターとしてマスコミへのコンタクトを担当、もう1人がプランナーとしてPR戦略のプランニングを担当する、みたいな感じです。

規模の大きなPR会社になると、さらに役割が細かく分けられる場合もあります。
例えば、プロモーターの中でも、Aさんはテレビ担当、Bさんは新聞担当、Cさんは雑誌担当と媒体ごとに担当がわかれます。もっと言えば、プロモーターであるDさんは、テレビ担当かつTBSの番組プロモートのみを担当し、毎日、TBSに通って、TSBの番組関係者とのコンタクトのみを行う、なんてことがあります。

PR会社の組織としては効率がいいのでしょうが、PRパーソンにとってみれば、これはかわいそうな話です。特定領域には詳しくなれますが、それは組織の歯車というだけのこと。会社にとって良い人材にはなれても、PRパーソンとして価値のある人材にはなれず、その後のキャリアも描けなくなってしまいます。

さらにこの体制は、PRパーソンの視点だけでなくクライアント視点から見ても問題があります。

なぜなら、この体制ではクライアントとPR会社側が円滑なコミュニケーションを取ることができないからです。クライアントが発信したいメッセージがマスコミ関係者に伝わるまでに何人も介すうちに伝言ゲームになり、コミュニケーションの齟齬が生まれやすくなります。
ここに広告代理店がからむともう大変です!こんな伝言ゲームが発生します。

クライアントの責任者(上司)→クライアントの窓口担当者(部下)→広告代理店の担当者→PR会社(広告代理店の下請け)のアカウントエグゼクティブ→PR会社のプロモーター→マスコミ関係者。

こんな伝言ゲームが機能するわけがないですから、これは構造的欠陥と言わざるを得ません。また、クライアント一社に対して複数人(アカウントエグゼクティブ、プランナー、プロモーター)が関わるとなると、PR会社がクライアントに請求する金額は当然高くなります。

こういった問題を解決するために、当社ではひとりのスタッフが3役(アカウントエグゼクティブ、プランナー、プロモーター)をこなし、クライアント1社に対して担当者1名が責任を持ってサービスを提供するようにしています(もちろん上司や組織・チームとしてのサポートはありますが)。そうすることでクライアント・PR会社・マスコミ関係者間のコミュニケーションはスムーズかつスピーディーに進み、クライアントが支払う料金も大手PR会社の半分以下に抑えられるのです。

ただし、これを実現しようとするとPR会社のスタッフには高い能力が求められます。何せひとり3役をこなさなきゃいけないので。しかし、本来PRパーソンはこれくらいできなきゃダメだと思います。実際にフリーランスのPRパーソンの方は、これをやってるわけですし。

T字型人材へのステップ

おそらくこの記事を読んでくれている方はPRパーソンが多いと思いますので、最後にT字型人材に成長する方法をお伝えします。

まずよくありがちな間違いは、「色々勉強します!」と本を読んだり、セミナーに参加したり、意識だけ高く動くことです。勉強する意欲は素晴らしいのですが、これではT型人材には到底なれません。なぜなら、机上の勉強では業務に耐えうるレベルの知識スキルは身につかないからです。

では、どうしたら身につくのでしょうか?
それは、実務を通じて自分自身を成長させていくしかありません。

クライアントから自分が過去にやったことがない未経験の内容について依頼を受けたときに「私はその領域の専門家ではないので、できません」と答えるのか、「わかりました。情報収集をして提案をさせていただきます」と答えるのか。この姿勢の違いが成長できるかどうかの分かれ目になります。

今まで経験のない依頼を受けたときにその場で勉強して、クライアントの要望にどれだけ応えられるかどうか、必死に努力を続けられるかどうかで、T字型人材になれるかどうかが決まります。むしろ、T字型人材を目指すのであれば、「PR活動もいいですけど、御社の場合こういう広告施策の方が経営課題の解決になるのではないですか?」というように、PR以外のコニュニケーション方法について、自ら提案しにいくくらいの姿勢を持つべきです。

視野を幅広く持ち行動することがT字型人材への成長に繋がり、ひいてはPR業界の底上げにもつながっていくでしょう。

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記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人
記事の執筆者
野澤直人
野澤 直人
代表取締役

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ、同社の急成長に貢献する。2010年に株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。

野澤 直人