スタートアップのためのPR会社
株式会社ベンチャー広報の東山です。
今回は企業広報に関するおすすめ書籍をご紹介させていただきます。
書籍:『戦略思考の広報マネジメント 業績向上につながる“8つの広報力”の磨き方』
編著:企業広報戦略研究所
監修:清水正道
発行元:日経BPコンサルティング
本書籍は、日本国内の上場企業を対象に実施した「広報力調査」の結果から、各企業の広報力(広報活動の実態)を8つの視点で評価を行いチャート化した「広報オクトパスモデル分析」をもとに、広報力を高めたい企業の広報課題を抽出するとともに、課題解決のヒントとなる広報先進企業の取り組みを企業の広報担当者へのインタビュー形式で紹介している書籍です。
企業の広報力を成長させるためには、俯瞰的に広報課題を把握すること、そして広報課題を解決するためには、広報担当者だけでなく企業全体としての取り組みが必要と説く本書籍は、広報担当者だけでなく、企業トップの方にもぜひお読みいただきたい一冊です。
「広報オクトパスモデル」―8つの広報力
「広報力調査」をもとに開発された「広報オクトパスモデル分析」の8つの広報力についてご紹介いたします。なお本書籍では「広報力調査」で実際に使用したアンケート項目も付録として収録されていますので、自社の広報力の強みと弱みを確認していただけるかと思います。
1.「情報収集力」:自社や競合の評判を収集・把握する
2.「情報分析力」:収集情報に基づき、課題を洞察する
3.「戦略構築力」:広報戦略の構築と目標管理・見直し
4.「情報創造力」:相手に合わせてメッセージを開発する
5.「情報発信力」:複数の情報発信手法を複合的に駆使する
6.「関係構築力」:重点ステークホルダーと信頼関係を高める
7.「危機管理力」:リスクの予測・予防や緊急対応スキル
8.「広報組織力」:経営と広報の一体活動のための意思決定
日本企業が特に弱い広報力
前述の8つの広報力は、もちろんすべてが高いレベルで実働している状態が理想的なのですが、本書籍では日本企業が弱い4つの広報力を「戦略構築力」「情報創造力」「関係構築力」「危機管理力」だと指摘しています。
例えば、「戦略構築力」の課題は「対処療法的に対応し、後回しになりがち」だと論じています。広報戦略が中長期的な「経営戦略」よりも、比較的短期視点の「事業戦略」を優先させてしまっているアンバランスを解消し、経営戦略と広報戦略をリンクさせるべきなのです。
私たちベンチャー広報も「広報PR」=「経営戦略」であると考えております。当社は「スタートアップ企業のためのPR会社」を標榜しておりますが、大企業もスタートアップ企業でも広報活動の基本は同じなのです。
また、「情報創造力」の課題としては「戦略に沿ったメッセージづくりができていない」と指摘しています。この課題は戦略構築力が弱いことに関連しています。当然のことなのですが広報戦略に沿ったメッセージを発信できなければ、相手にメッセージは伝わりにくく、仮に伝わったとしても本来の目的を達成できていない可能性もあります。
個人の感想なのですが、広報に携わる者としては「何を伝えるべきなのか」を考え、そしてさらに「伝える」よりも「伝わる」ことを意識して相手に「何が伝わらなければいけないのか」ということを改めて意識する機会となりました。
「戦略構築力」成長のためのヒント
本書籍では、うまく広報活動を行っている企業をケーススタディとして紹介しています。「戦略構築力」の事例では、スターバックスコーヒージャパンの広報部長である足立紀生氏のインタビューが掲載されています。
ご存じのとおりスターバックスは1996年の日本上陸以来、マス広告は行わずに圧倒的なブランド力をもって事業を成長させてきました。インタビューではスターバックスの成長要因の一つに経営戦略の中期計画に沿った広報戦略の立案があり、その広報戦略に基づく具体的なアクションも具体的に紹介されています。
ほかにも「情報創造力」の事例として日本オラクルや「関係構築力」では森ビル、「危機管理力」では三井化学の広報担当者へのインタビューが掲載されており、日本企業が特に弱いとされる4つの広報力の課題解決のヒントが示されています。
おわりに
本書籍のサブタイトルには「業績向上につながる“8つの広報力”の磨き方」とありますが、広報PRに関するノウハウやテクニックを紹介する類の書籍ではありません。企業にとっての広報力の磨き方の指南書です。冒頭でも述べましたが、本書籍は広報担当者だけでなく、ぜひ企業トップの方にもお読みいただきたい一冊です。
書籍:『戦略思考の広報マネジメント 業績向上につながる“8つの広報力”の磨き方』
編著:企業広報戦略研究所
監修:清水正道
発行元:日経BPコンサルティング