スタートアップのためのPR会社
株式会社ベンチャー広報
代表取締役の野澤直人です。
広報担当者の重要な仕事のひとつは、記者・編集者・TVディレクターなど、マスコミの中の人を口説いて、自分の会社を取材してもらうことです。皆さんご存知のとおりこれは簡単なことではありません。
マスコミの中の人を口説き落とす秘訣のひとつに「広報担当者の熱意」という要素があります。当然、熱心に口説いた方が取材獲得の成功率は高まります。
しかし困ったことに、この「熱意」を勘違いしている広報担当者が非常に多い。
- FAXでプレスリリースを送った後「届きましたか?見てもらえましたか?」と確認の電話をする。
- 電話でプレスリリースの内容を一言一句丁寧に説明する。
- 相手の媒体のこともろくに調べず、とにかくたくさんの媒体に連絡する。
こういった行為は一見、熱心そうに見えますが、実はマスコミ側からは「この広報ウザいな」と思われて嫌われますので、くれぐれも注意してください。
では、「広報担当者の熱意」はどのように発揮すべきか。幻冬舎を立ち上げた伝説の編集者・見城徹氏のエピソードがとても参考になります。
※『SUPER CEO』の見城徹氏インタビューより引用。
https://superceo.jp/tokusyu/manga/100684
—————————-
角川書店に入社して文芸誌「野性時代」に配属になったとき、学生時代から憧れていた五木寛之さんとどうしても仕事がしたいと思った。でも五木さんはそれまで角川から新作を出したことはありませんでした。
そこで僕は五木さんが長編小説を出版したり、短編を発表したり、エッセーが掲載されたりするたび、そのすべてを読み込んで、感想を五日以内に書いて手紙で出すことを続けたんです。そして25通目を出したあと、ようやく五木さんにお会いすることができました。
そこからは早かった。「どうしても五木さんと仕事がしたいんです」という僕の言葉に、五木さんは「うん、やろう」と短く答えてくださいました。僕の思いは25通の手紙を通じて、すでに五木さんの心に届いていたからね。
—————————-
また、見城徹氏は石原慎太郎氏とどうしても仕事がしたくて、石原氏の著作『太陽の季節』と『処刑の部屋』を全て暗記し、石原氏に初めて会いに行った時に目の前で全文暗誦してみせた、というのも有名なエピソードです。
企業広報の仕事に置き換えるとこうなります。
- 取材して欲しい媒体のバックナンバーには全て目を通して内容を把握する。
- 取材して欲しい記者や編集者が特定できているならその人の書いた過去記事を全て読む。
- 取材して欲しい記者や編集者が書いた新しい記事は全て読んで感想を送ってあげる。
これが正しい「広報としての熱意の表し方」です。
恋愛と一緒かもしれませんね。
好きな人ができたら、まずその人のことを知りたいと思うじゃないですか。趣味は?好きな食べ物は?良く行く場所は?などなど。
恋愛の場合はあまりやりすぎるとストーカーになっちゃいますが(苦笑)、広報活動の場合は心配無用。相手のことを徹底的に理解してから直接コンタクトしましょう。
広報の「取材してください!」は、恋愛の「好きです!付き合ってください!」と同じですから。
そう考えると「プレスリリースの一斉配信」という行為が広報の本質からはズレていることがわかります。
恋愛に例えれば、プレスリリース=ラブレターです。ラブレターを不特定多数に送る人なんていませんよね。不誠実すぎる・笑。
ぜひ正しい方向で広報としての熱意を発揮してください。
追伸
見城徹氏の著書『編集者という病い』(太田出版)、『たった一人の熱狂』(双葉社)は、編集者の思考や行動を理解する上でとても参考になります。おすすめです。