スタートアップのためのPR会社
株式会社ベンチャー広報
代表取締役の野澤直人です。
中小ベンチャー企業の広報担当者の仕事とは何でしょうか?
実はこれを勘違いしている広報マンがとても多いです。
知人のあるベテラン広報マンは、プレスリリースの作成にとても時間をかけます。文章の一言一句からレイアウトや写真まで、そのこだわりはかなりのもので、完成したリリースは、これぞ広報のプロが作ったという素晴らしい出来映えです。
そして、その完璧なプレスリリースをFAXやメールで一斉配信するわけですが、結果、レスポンスはゼロ。残念ながら全く取材が入らないことが多々あるのです。いったい何のためにプレスリリースを書いているのでしょうか。
もちろん、プレスリリースの質が高いに越したことはありませんが、リリースは芸術作品ではありません。
私からすると、プレスリリースの作成に何時間もかけるくらいなら、記者や編集者に電話をして取材依頼をした方がいいと思います。1本電話して即取材になれば、仕事は5分で完了です。中小ベンチャー企業の広報担当者の仕事は、プレスリリースを書くことやそのリリースをマスコミに送ることではありません。
自社の商品やサービスを取材してもらうこと。これこそが広報担当者の仕事であり、本来の目的です。プレスリリースの作成や送付は「取材獲得」という目的を達成するための手段の1つに過ぎないのです。
これをマスコミの側から考えてみましょう。
マスコミ側からすると、既にプレスリリースという書面になり、FAXやメールで配信された情報には基本的に価値を感じません。
だって、それは誰でも手に入れられる情報ですから。
マスコミが求めているのは、「まだ一般の人や他のマスコミは知らないが、報道するに値するニュース価値のある情報」。
言い換えれば、「特ダネ」です。
プレスリリースを書く前に電話で記者にコンタクトする意味は、まさにここにあります。「まだリリースにはしていないのですが、ちょっと面白い話がありまして…」と言って、リリースを書く前に記者や編集者にコンタクトするのです。マスコミからすると「もしかしたら特ダネかも…」と思って聞いてくれます。
「その話、面白いですね」と記者が食いついてきてから、プレスリリースの作成に着手しても遅くはありません。
逆に、電話のアプローチで取材にならなかったとしても、気を落とすことはありません。ダメだった理由と、どうすれば記事になる可能性があるかを相手の記者に聞いてみましょう。そして、その情報をふまえて再度PRする話題を練り直せばいいのです。
このように、プレスリリースを書く前に電話で記者にコンタクトすることは、実は取材依頼と同時に「その話題のニュース性を確認する」という意味があります。
自社のPRネタについて、記事になるかならないかニュース性の判断がつかないときほど、プレスリリースを書く前に、こういった「記者へのヒアリング」をすべきです。あまりに記者の反応が悪ければ、プレスリリースを書くのはやめたほうがいいでしょう。時間を使ってもどうせ無駄ですから。
この「記者へのヒアリング」というひと手間をかけるかどうかで、プレスリリースが取材になる確率もだいぶちがってきますよ。
野澤直人